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残業代の計算方法とIT業界の固定残業代(みなし残業)

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残業代の計算方法とIT業界の固定残業代(みなし残業)

残業代の計算方法とIT業界の固定残業代(みなし残業)

IT業界で転職を考える際、求人票でよく目にする「固定残業代」や「みなし残業」という言葉。実際の給与体系を理解せずに転職すると、想定していた収入と実態が大きく異なる可能性があります。本記事では、残業代の基本的な計算方法から、IT業界特有の固定残業代制度の仕組み、さらには違法性のチェックポイントまで、転職前に知っておくべき知識を網羅的に解説します。

残業代の基本的な計算方法

残業代(時間外労働手当)は労働基準法第37条に基づいて計算されます。基本的な計算式は以下の通りです。

残業代 = 1時間あたりの賃金額 × 残業時間 × 割増率

1時間あたりの賃金額は「月給 ÷ 月平均所定労働時間」で算出します。月平均所定労働時間は、年間所定労働日数に1日の所定労働時間を掛けて12ヶ月で割った値です。

割増率は労働時間の種類によって異なります。通常の時間外労働は25%増(1.25倍)、深夜労働(22時~5時)は25%増、法定休日労働は35%増(1.35倍)となります。2018年の働き方改革法により、月60時間を超える時間外労働については50%増(1.50倍)の割増率が適用されます。

例えば、月給30万円で月平均所定労働時間が160時間の場合、1時間あたりの賃金額は1,875円となり、10時間の残業をした場合の残業代は23,437円(1,875円 × 10時間 × 1.25)となります。

詳しい計算方法については固定残業代の計算方法とは?割増率や注意点をわかりやすく解説 - 弥生株式会社で確認できます。

固定残業代(みなし残業)とは何か

固定残業代(みなし残業)は、実際の労働時間に関係なく、一定時間残業したものとみなして固定で残業代を支給する制度です。IT業界では多くの企業でこの制度が採用されており、求人票では「基本給25万円(固定残業代5万円、20時間分を含む)」のような形で表示されます。

この制度には「手当型」と「組込型」の2種類があります。手当型は基本給と残業代を明確に分けて支給する方法で、組込型は基本給に残業代を含める方法です。どちらの方式でも、固定残業時間を超えた分については別途支給する義務があります。

固定残業代制度を導入している企業でも、実際の残業時間の記録は必須です。「固定で払っているから記録は不要」という認識は誤りであり、労働時間の適切な管理が求められます。この点は【企業向け】固定残業代とは?正しい導入・計算方法・明示のポイントを徹底解説でも詳しく説明されています。

IT業界で転職を考えている方は、IT業界の年収ガイド【職種別・企業別・年齢別】も参考にすることで、固定残業代を含めた実質的な年収を正確に把握できます。

IT業界における固定残業代の実態

IT業界では、プロジェクトの進行状況によって業務量が変動しやすいため、固定残業代制度が広く採用されています。特にSIer企業やWeb系企業では、月20~45時間程度の固定残業時間を設定している企業が多く見られます。

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TokyoDevによると、IT業界では72%の従業員が週40時間以下の労働時間で働いているとされていますが、これは固定残業時間を含めた数値であり、実際のプロジェクト状況によっては超過勤務が発生するケースも少なくありません。

IT企業の固定残業代の設定例を見てみましょう。

企業タイプ

基本給

固定残業代

想定残業時間

総支給額

SIer大手

28万円

7万円

30時間

35万円

Web系中堅

25万円

5万円

20時間

30万円

SES企業

22万円

8万円

40時間

30万円

外資系IT

35万円

10万円

30時間

45万円

この表からわかるように、同じ総支給額30万円でも、基本給と固定残業代の内訳は企業によって大きく異なります。基本給が低く固定残業代が高い企業の場合、賞与の計算基準も基本給ベースとなるため、実質的な年収が低くなる可能性があります。

IT企業の種類と選び方【SIer・Web系・SES】では、企業タイプごとの労働環境の違いについて詳しく解説していますので、転職先を選ぶ際の参考にしてください。

固定残業代の計算方法と具体例

固定残業代の計算式は以下の通りです。

固定残業代 = 1時間あたりの賃金額 × 固定残業時間 × 割増率(1.25)

手当型の場合、計算は比較的シンプルです。例えば、基本給25万円、月平均所定労働時間160時間、固定残業時間20時間の場合:

  1. 1時間あたりの賃金額 = 250,000円 ÷ 160時間 = 1,562.5円
  2. 固定残業代 = 1,562.5円 × 20時間 × 1.25 = 39,062円

組込型の場合は、基本給に既に残業代が含まれているため、逆算して確認する必要があります。月給30万円(20時間分の固定残業代を含む)の場合:

  1. 基本給部分を X とすると、X + (X ÷ 160時間) × 20時間 × 1.25 = 300,000円
  2. X × (1 + 0.15625) = 300,000円
  3. X = 259,459円(基本給)
  4. 固定残業代 = 40,541円

実際の残業時間が固定残業時間を超えた場合の計算例も見てみましょう。上記の例で実際の残業時間が25時間だった場合:

  • 固定残業代でカバーされる分:20時間分(39,062円)
  • 追加で支給が必要な分:5時間分 = 1,562.5円 × 5時間 × 1.25 = 9,766円
  • 合計残業代:48,828円

固定残業代(みなし残業代)の計算方法とは?超過分の計算や違法となるケースも解説! |HR NOTEでは、より詳細な計算例と注意点が解説されています。

違法な固定残業代制度のチェックポイント

固定残業代制度には法的な要件があり、これを満たさない場合は無効となる可能性があります。転職前に確認すべき主要なチェックポイントを紹介します。

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1. 明示義務の確認

採用時に以下の3点が明確に示されているか確認しましょう。

  • 固定残業代を除いた基本給の額
  • 固定残業時間数と金額の計算方法
  • 固定残業時間を超えた分は別途支給する旨

これらが求人票や雇用契約書に明記されていない場合、みなし残業(固定残業代)が違法となる5つのケースと重要判例3選で解説されているように、制度自体が無効と判断される可能性があります。

2. 36協定との整合性

固定残業時間は、36協定で定められた時間外労働の上限である月45時間、年360時間の範囲内に設定する必要があります。月60時間を超える固定残業時間を設定している場合は、労働基準法違反の可能性が高いと言えます。

3. 最低賃金の確保

基本給(固定残業代を除いた部分)が最低賃金を下回っていないか確認することも重要です。例えば、東京都の最低賃金が1,113円(2024年)の場合、月160時間労働で最低178,080円の基本給が必要です。

4. 超過分の支払い実績

固定残業時間を超えた場合に、実際に追加の残業代が支払われているか、過去の給与明細などで確認しましょう。「固定残業代に含まれる」という説明で追加支払いを拒否される場合は違法です。

5. 実労働時間の記録

固定残業代制度を採用していても、実際の労働時間を適切に記録し管理する義務があります。タイムカードや勤怠管理システムで正確に記録されているか確認しましょう。

IT転職の面接対策完全マニュアルでは、面接時にこれらの点を確認する具体的な質問方法についても解説しています。

転職時の給与交渉で注意すべき点

IT業界で転職する際、固定残業代を含む給与体系について適切に理解し、交渉することが重要です。

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実質年収の計算方法

提示された年収が固定残業代を含むかどうかで、実質的な収入は大きく変わります。例えば、年収500万円の求人があった場合:

パターンA:固定残業代なし

  • 月給:約41.7万円
  • 賞与:年2回(2ヶ月分)
  • 実質月給:約41.7万円

パターンB:固定残業代あり(月30時間分、8万円)

  • 月給:約41.7万円(うち固定残業代8万円)
  • 基本給:約33.7万円
  • 賞与:基本給の2ヶ月分 = 約67.4万円
  • 実質年収:約471.8万円(固定残業時間内の場合)

このように、同じ年収500万円でも、固定残業代の有無や賞与の計算方法によって実質的な収入は異なります。

給与交渉時の確認事項

転職の給与交渉では、以下の点を明確にしましょう。

  1. 基本給と固定残業代の内訳
  2. 固定残業時間と超過分の支払い方法
  3. 賞与の計算基準(基本給ベースか総支給額ベースか)
  4. 実際の平均残業時間と超過分の支払い実績
  5. 年収に含まれるその他手当の内訳

IT転職エージェント徹底比較【おすすめランキング】で紹介している転職エージェントを活用すれば、これらの点について詳細に確認し、適切な条件で交渉を進めることができます。

業界標準との比較

IT業界における固定残業時間の平均は20~30時間程度です。これを大きく超える固定残業時間が設定されている場合、実際の労働環境が過酷である可能性があります。Japan Devのデータによると、健全なIT企業では実際の残業時間が固定残業時間を下回るケースが多く、超過分の支払いが頻繁に発生する企業は労働環境に問題がある可能性が高いとされています。

まとめ:固定残業代を正しく理解して転職を成功させる

固定残業代制度は、適切に運用されれば労働者と企業の双方にメリットがある制度ですが、制度の仕組みを理解せずに転職すると、想定外の労働環境や収入に直面する可能性があります。

本記事で解説した計算方法、違法性のチェックポイント、給与交渉時の注意点を踏まえて、転職先の給与体系を正確に把握しましょう。特にIT業界では固定残業代制度が一般的であるため、求人票や面接時に以下の点を必ず確認してください。

  • 基本給と固定残業代の明確な内訳
  • 固定残業時間の妥当性(月45時間以内か)
  • 超過分の支払い実績と方法
  • 実際の平均残業時間
  • 賞与の計算基準

これらを確認することで、入社後のミスマッチを防ぎ、納得のいく転職を実現できます。IT業界での転職をさらに成功させるために、IT転職の完全ガイド【未経験からエンジニアへ】未経験からのIT転職完全攻略【ゼロからの始め方】も併せてご覧ください。

固定残業代に関する疑問や不安がある場合は、転職エージェントや労働基準監督署に相談することをおすすめします。正しい知識を持って、理想のIT企業への転職を成功させましょう。

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