IT転職で年収が下がるケースと対策法
IT業界の年収ガイド【職種別・企業別・年齢別】
IT転職で年収が下がるケースと対策法
IT業界は高収入が期待できる業界として知られていますが、実際には転職で年収が下がってしまうケースも少なくありません。特に2023年以降、物価高による景気後退の影響で企業のIT投資が鈍化し、転職市場の状況が大きく変化しています。
この記事では、IT転職で年収が下がる具体的なケースと、それを防ぐための実践的な対策法を徹底解説します。転職を検討している方はもちろん、将来的なキャリアプランを考えている方も、ぜひ参考にしてください。
IT転職で年収が下がる7つの主要ケース
IT転職において年収が下がるケースには、いくつかの典型的なパターンが存在します。事前にこれらのケースを理解しておくことで、転職時のリスクを最小限に抑えることができます。

ケース1:未経験職種・技術分野への転職
未経験の職種や新しい技術分野へ転職する場合、即戦力としての経験やスキルが不足しているため、年収が下がることが一般的です。例えば、インフラエンジニアからフロントエンドエンジニアへの転職、またはJava開発者がPython機械学習エンジニアに転身する場合などが該当します。
企業側としては、入社後の活躍度合いを測りにくいため、初年度の年収は控えめに設定される傾向にあります。ただし、プログラミング言語別IT転職ガイドで解説しているように、長期的な視点で見れば将来性のある分野への転職は有効な選択肢です。
dodaの転職ガイドによると、未経験職種への転職では年収が10〜20%程度下がるケースが多いとされています。
ケース2:役職・ポジションの低下
前職より役職や階級が低いポジションで転職すると、職位の分の手当がなくなってしまい年収が下がります。例えば、マネージャーからメンバーへの転職や、リードエンジニアから一般エンジニアへの転職などです。
特に大企業から中小企業への転職では、組織構造の違いにより同等のポジションが存在しないケースもあります。転職前には、提示されたポジションと役職手当の有無を必ず確認しましょう。
ケース3:給与体系・手当の違い
企業によって給与体系や諸手当の種類が大きく異なります。特に以下の要因が年収に影響します:
給与構成要素 | 影響の内容 | 注意点 |
|---|---|---|
残業手当 | 残業時間が減少すれば割増賃金も目減り | みなし残業代の有無を確認 |
住宅手当 | 企業により0〜5万円程度の差 | 支給条件を事前確認 |
家族手当 | 扶養家族の有無で年収に影響 | 配偶者・子供の手当額を比較 |
賞与 | 年俸制か月給制かで大きく変動 | 賞与の月数と算定基準を確認 |
通勤手当 | リモート勤務では支給なしも | 交通費の上限額を確認 |
基本給だけでなく、総支給額と各種手当の内訳を詳細に比較することが重要です。
ケース4:多重下請け構造の影響
IT業界特有の多重下請け構造により、下請け構造の下位企業ほど単価交渉力が弱く、低単価案件を受けざるを得ない状況があります。SIerやSES企業の間を転職する際は、企業の受注構造における立ち位置を確認することが重要です。
IT企業の種類と選び方【SIer・Web系・SES】で詳しく解説していますが、自社開発企業やプライム案件を中心に扱う企業への転職が、年収低下を防ぐポイントになります。
ケース5:地方への転職・リモート勤務への切り替え
地方企業への転職や、完全リモート勤務の企業への転職では、地域賃金格差や勤務形態の違いにより年収が下がるケースがあります。ただし、生活費の削減やワークライフバランスの改善などのメリットも考慮する必要があります。
詳しくはIT転職の働き方ガイド【リモート・副業・ワークライフバランス】で解説していますが、総合的な生活の質向上という観点から判断することが大切です。
ケース6:業界や事業規模の変化
IT業界内でも、金融系IT、製造業IT、Web系など業界によって給与水準が異なります。また、大企業から中小企業・スタートアップへの転職では、一般的に年収が下がる傾向にあります。
ただし、スタートアップではストックオプションなど将来的なリターンが期待できる場合もあるため、IT業界の業種別転職ガイド【金融・医療・製造等】を参考に、総合的に判断しましょう。
ケース7:市場環境の変化
type転職の記事によると、2023年以降、急速な物価高による景気後退の影響で、企業のIT投資やスタートアップ投資が鈍化しています。現在、転職による年収アップ幅はよくて1割程度で、過半数は現状維持か下落傾向にあります。
これは個人の能力や経験に関わらず、マクロ経済環境による影響であるため、転職タイミングの見極めも重要な要素となっています。
IT転職で年収が下がる主な原因
年収が下がるケースを理解したところで、その背景にある根本的な原因を深掘りしていきます。

市場価値とスキルのミスマッチ
自分が持っているスキルと、転職先が求めるスキルにギャップがある場合、期待される年収も下がります。特にレガシー技術のみの経験者が最新技術を使う企業に転職する場合などに起こりやすい現象です。
ITエンジニアのスキルアップ戦略【学習と成長】で解説しているように、常に市場ニーズに合わせたスキル習得が必要です。
転職交渉力の不足
レバテックキャリアの調査によると、賃金交渉を行った人の62%が年収増加を実現しているのに対し、交渉を行わなかった人では52%にとどまっており、約10ポイントの差が生じています。
多くのエンジニアは技術力には自信があっても、給与交渉のスキルが不足しているケースが多いです。IT転職エージェント徹底比較【おすすめランキング】で紹介しているような、交渉をサポートしてくれるエージェントの活用も有効です。
情報不足による判断ミス
転職先の企業文化、実際の働き方、昇給・昇格の仕組みなどについて十分な情報を得ないまま転職を決めてしまうと、想定外の年収低下が起こります。面接では基本給だけでなく、年収の構成要素全体を確認することが重要です。
年収低下を防ぐための7つの実践的対策
ここからは、IT転職で年収が下がるのを防ぐための具体的な対策法を紹介します。

対策1:市場価値を高める継続的なスキルアップ
市場に必要とされる人材になることが、年収低下を防ぐ最も基本的かつ効果的な方法です。Offers Magazineの記事では、以下のようなアプローチが有効とされています:
- 新しい技術の習得:クラウド(AWS/Azure/GCP)、コンテナ技術(Docker/Kubernetes)、AI/機械学習など需要の高い技術を学ぶ
- 資格取得:AWS認定資格、Google Cloud認定資格、情報処理技術者試験など、IT資格で転職を有利にする完全ガイドで推奨されている資格を取得する
- ポートフォリオの作成:GitHubでのコード公開、技術ブログの執筆、OSSへの貢献など、実績を可視化する
スキルセットを定期的に棚卸しし、足りない部分を補強する努力を続けることで、転職市場での競争力が高まります。
対策2:適切な給与交渉の実施
給与交渉は転職成功の重要な要素です。以下のポイントを押さえましょう:
交渉のポイント | 具体的なアクション | 期待される効果 |
|---|---|---|
市場調査 | 同職種・同レベルの年収相場を事前に調査する | 適正な希望年収を提示できる |
根拠の準備 | 自分のスキルや実績を具体的な数字で示す | 説得力が増し交渉が成功しやすい |
タイミング | 内定後、入社承諾前が交渉の最適なタイミング | 企業側も柔軟に対応しやすい |
柔軟性 | 基本給だけでなく、手当やボーナスなど総合的に交渉する | 総年収での合意がしやすい |
プロの活用 | 転職エージェントに交渉を代行してもらう | 専門家の知見で有利な条件を引き出せる |
特に初めての転職では、IT転職の面接対策完全マニュアルを参考に、面接から交渉までの流れを理解しておくことが重要です。
対策3:長期的なキャリア視点での判断
JACリクルートメントの解説によると、初年度の年収が現年収よりも下がるとしても、入社後に成果を上げ、昇給・昇格を重ねることで、数年後に年収アップを実現できるケースは多くあります。
ITエンジニアのキャリアパス設計ガイドで解説しているように、以下の要素を総合的に判断しましょう:
- 成長機会:新しい技術や業務領域に挑戦できるか
- 昇給制度:明確な評価基準と昇給の仕組みがあるか
- 市場価値の向上:その会社での経験が将来的なキャリアにプラスになるか
目先の年収だけでなく、5年後、10年後のキャリアを見据えた判断が重要です。
対策4:転職先の徹底的なリサーチ
企業選びの段階で、以下の情報を詳細に調査することで、想定外の年収低下を防げます:
- 給与体系の詳細:基本給、各種手当、賞与の算定方法、昇給の仕組み
- 実際の年収例:同じポジションの社員の年収レンジ
- 残業実態:みなし残業の有無、実際の残業時間
- 評価制度:成果がどのように給与に反映されるか
- 企業の収益構造:下請け構造のどの位置にいるか
IT転職サイト・求人サービスの使い方ガイドで紹介されているような複数の情報源を活用し、多角的に企業を評価しましょう。
対策5:キャリア戦略の3つの柱を強化
長期的に年収を維持・向上させるためには、以下の3つの能力を意識的に育てることが効果的です:
- 利他性を育む:メンバー育成やチームへの貢献を意識する。マネジメント経験は市場価値を高める重要な要素です
- 共感力を磨く:業界知識や業務知識など、技術以外の知見の吸収に努める。ビジネスサイドとのコミュニケーション能力が評価される
- 発信力を高める:日々の活動を公開し人脈を築いておく。技術ブログ、登壇、SNSでの情報発信が転職時の強みになる
これらの能力は、純粋な技術力だけでは得られない付加価値を生み出します。
対策6:前職の経験を活かせる領域を選ぶ
完全に未経験の分野に飛び込むのではなく、前職での経験やスキルを活かせる業界・職種を選択することで、即戦力として認められやすくなります。
例えば:
- 金融業界のSIerから金融系Web企業への転職
- 医療システム開発から医療IT企業への転職
- ECサイト開発から小売業のDX部門への転職
IT業界の年収ガイド【職種別・企業別・年齢別】を参考に、自分の経験が最も評価される領域を見極めましょう。
対策7:複数のオファーを比較検討する
1社だけでなく、複数社から内定を得て比較検討することで、より良い条件を引き出せる可能性が高まります。また、他社のオファーがあることを伝えることで、希望する企業が条件を見直してくれるケースもあります。
IT転職の年代別攻略ガイド【20代・30代・40代】で解説しているように、年代によって最適な転職戦略は異なります。自分の年齢とキャリアステージに合わせた戦略を立てましょう。
年収が下がっても転職すべきケース
年収の維持・向上は重要ですが、以下のような場合は年収が下がっても転職を検討する価値があります。

キャリアの長期的成長が見込める場合
最新技術を扱える環境や、大規模プロジェクトに携わる機会など、将来的な市場価値の向上につながる経験が得られる場合は、一時的な年収低下を受け入れる選択肢もあります。
特に20代・30代前半であれば、スキル習得を優先することで、中長期的には大きなリターンが期待できます。
ワークライフバランスの大幅な改善
過度な残業から解放され、健康的な生活が送れるようになることは、金銭では測れない価値があります。残業代込みの年収が下がっても、時給換算では実質的に上がっているケースも多いです。
働く環境・企業文化が大きく改善される場合
パワハラやセクハラのない健全な職場環境、自分の価値観に合った企業文化など、働きやすさの向上も重要な要素です。精神的な健康を損なう環境に留まり続けることは、長期的なキャリアにとってマイナスです。
転職後に年収を回復・向上させる方法
万が一、転職で年収が下がってしまった場合でも、以下の方法で回復・向上を目指せます。

入社後の早期成果創出
入社後3ヶ月〜6ヶ月で目に見える成果を出すことで、早期の昇給や評価向上につながります。新しい環境でも、以下のような貢献ができます:
- プロセス改善の提案と実行
- ドキュメント整備やナレッジ共有
- 新しい技術の導入提案
- チームメンバーへのサポート
定期的な評価面談での交渉
多くの企業では年1〜2回の評価面談があります。その機会を活用して、自分の貢献を適切にアピールし、給与への反映を求めることが重要です。
副業・フリーランス案件での収入補填
本業以外で収入を得ることも選択肢の一つです。フリーランスエンジニアへの転身ガイドで紹介しているように、週末や平日夜間にフリーランス案件を受けることで、年収の不足分を補えます。
ただし、本業に支障が出ないよう注意し、副業が許可されている企業であることを確認しましょう。
まとめ:戦略的な転職で年収低下を防ぐ
IT転職で年収が下がるケースとその対策について解説してきました。重要なポイントをまとめます:
年収が下がる主なケース:
- 未経験職種・技術分野への転職
- 役職・ポジションの低下
- 給与体系・手当の違い
- 多重下請け構造の影響
- 地方への転職・リモート勤務への切り替え
- 業界や事業規模の変化
- 市場環境の変化
年収低下を防ぐ対策:
- 市場価値を高める継続的なスキルアップ
- 適切な給与交渉の実施
- 長期的なキャリア視点での判断
- 転職先の徹底的なリサーチ
- キャリア戦略の3つの柱(利他性・共感力・発信力)の強化
- 前職の経験を活かせる領域の選択
- 複数のオファーの比較検討
現在の転職市場では、以前のような大幅な年収アップは難しくなっていますが、適切な準備と戦略により、年収を維持しながらキャリアアップすることは十分可能です。
IT転職の完全ガイド【未経験からエンジニアへ】も併せて参考にし、自分に最適な転職戦略を立てましょう。転職は人生の重要な決断です。目先の年収だけでなく、長期的なキャリアビジョンを持って判断することが成功への鍵となります。



