SIerとは?仕事内容・年収・メリットデメリット
IT企業の種類と選び方【SIer・Web系・SES】
SIerとは?仕事内容・年収・メリットデメリット
SIer(エスアイヤー)は、System Integrator(システムインテグレーター)の略称で、企業の情報システムに関する企画から開発、運用まで一貫して請け負うIT企業のことです。日本のIT業界において、SE(システムエンジニア)の主要な就職先として知られています。本記事では、SIerの仕事内容、年収、メリット・デメリットについて詳しく解説します。
日本政府の情報通信白書(2018年)によると、日本のIT人材の72%以上、約75万人がSIerやITベンダーに所属しています。システムインテグレーション市場は2024年時点で329億ドル(約4.7兆円)の規模を誇り、2033年までに741億ドルに成長すると予測されています。
SIerとは何か?基本を理解する
SIerは、企業が抱える業務課題をITシステムで解決する専門企業です。銀行の勘定系システムや小売店の在庫管理システムなど、あらゆる業界の基幹システム構築を担っています。
SIerの主な業務領域
SIerが提供するサービスは多岐にわたります:
- システム開発・設計: 要件定義から設計、開発、テストまでの全工程を管理
- システム運用・保守: 稼働後のシステムを安定的に維持し、不具合対応やアップデートを実施
- 経営戦略コンサルティング: IT導入による業務改善提案や経営課題の解決支援
- システムインテグレーション: 複数のシステムやサービスを統合し、全体最適化を実現
- セキュリティ対策: 企業の情報資産を守るためのセキュリティ構築・運用
これらの業務を通じて、IT企業として幅広いキャリアパスを提供しています。
SIerの分類と特徴
SIer業界は、その出自や特性によって5つのタイプに分類されます。それぞれの特徴を理解することで、IT転職の際の企業選びに役立ちます。
分類 | 代表企業 | 特徴 | 平均年収目安 |
|---|---|---|---|
メーカー系 | 日立製作所、富士通、NEC | 親会社の製品との親和性が高く、安定した案件を確保 | 800万円〜950万円 |
ユーザー系 | NTTデータ、野村総合研究所 | 特定業界の深い知識とネットワークを持つ | 900万円〜1,200万円 |
独立系 | 大塚商会、トランス・コスモス | 特定メーカーに依存せず、柔軟なソリューション提案が可能 | 500万円〜800万円 |
コンサル系 | アクセンチュア、ベイカレント | 戦略立案から実装まで一貫したサービスを提供 | 900万円〜1,500万円 |
外資系 | IBM、日本オラクル | グローバルな技術力と最新トレンドへのアクセス | 800万円〜1,200万円 |
IT業界の年収は企業タイプによって大きく異なります。野村総合研究所(NRI)や電通総研などのトップ企業では平均年収が1,100万円を超えることもあります。
SIerの具体的な仕事内容
SIerでの仕事は、プロジェクトの規模や担当フェーズによって大きく異なります。ここでは、プロジェクトの工程ごとに仕事内容を詳しく見ていきましょう。

上流工程:要件定義・基本設計
顧客企業の課題をヒアリングし、システム化の要件を定義します。「何を実現するか」を明確にし、システムの全体像を設計する重要なフェーズです。
この段階では、顧客の業務フローを深く理解し、現状の課題を洗い出す必要があります。例えば、製造業の在庫管理システムを構築する場合、倉庫の入出庫業務、発注プロセス、在庫回転率の改善ポイントなどを詳細に分析します。
中流工程:詳細設計・開発
基本設計に基づいて、具体的なシステムの内部構造を設計し、プログラミングを行います。データベース設計、画面設計、API設計などを担当します。
開発工程では、プログラミング言語の選定から実装まで、技術的な判断が求められます。Java、Python、C#などの言語を使い分け、効率的で保守性の高いコードを書くスキルが必要です。
下流工程:テスト・導入・運用
開発したシステムが要件を満たしているか検証し、本番環境への導入を支援します。稼働後は、障害対応やシステム改善を継続的に実施します。
特に金融システムや医療システムなど、ミッションクリティカルなシステムでは、徹底的なテストと慎重な導入計画が不可欠です。
SIerで働くメリット
SIerでのキャリアには、独自の魅力があります。特にIT業界未経験からの転職者にとって、以下のメリットは大きな魅力となるでしょう。

1. 幅広い業界知識が身につく
SIerは多様な業界の顧客と仕事をするため、金融、製造、流通、医療など、さまざまな業界の業務知識を習得できます。この経験は、将来的なキャリアの選択肢を大きく広げます。
例えば、金融系のプロジェクトに携わることで、銀行の勘定系システムや証券取引システムの仕組みを理解し、フィンテック企業への転職や金融コンサルタントへのキャリアチェンジが可能になります。
2. 大規模プロジェクトの経験
数十人から数百人規模のプロジェクトに参加できるのは、SIerならではの経験です。プロジェクト管理、チームマネジメント、ステークホルダー調整など、技術以外のスキルも磨けます。
トヨタ自動車では、370台の機械から30,000のデータポイントをリンクさせた予知保全システムを構築しており、こうした大規模プロジェクトに関わることで、ITエンジニアのスキルアップを加速できます。
3. 安定した雇用環境
大手SIerは、継続的な案件確保と充実した福利厚生を提供しています。日立製作所やNTTデータなど、売上数兆円規模の企業は、景気変動にも強く、長期的なキャリア形成に適しています。
4. 体系的な教育制度
多くのSIerでは、新入社員向けの研修プログラムやIT資格取得支援が充実しています。未経験者でも、段階的にスキルを習得できる環境が整っています。
5. 上流工程へのキャリアパス
技術職からプロジェクトマネージャー、コンサルタントへとキャリアアップできる明確な道筋があります。マネジメントスキルを磨きながら、年齢に応じたキャリア戦略を描けます。
SIerで働くデメリット
一方で、SIerでのキャリアにはいくつかの課題も存在します。事前に理解しておくことで、入社後のミスマッチを防ぐことができます。

1. 多重請負構造の問題
日本のSI業界には、元請け・二次請け・三次請けといった階層構造が存在します。下位層になるほど利益率が低下し、給与や労働環境に影響が出ることがあります。
重要な注意点: SIerを選ぶ際は、必ず元請け企業を狙ってください。下請けや孫請けのSIerでは、元請けがマージンを取るため利益率が悪化し、給与水準や労働条件に大きな差が生じます。
2. 技術トレンドへの対応
大規模システムは、安定性を重視するため、最新技術の導入が遅れる傾向があります。レガシーシステムの保守に長期間関わることで、市場価値の高い新技術に触れる機会が限られる場合があります。
DX・AI時代のIT転職を考えると、クラウドネイティブやAI技術への対応が遅れることは、長期的なキャリアリスクとなる可能性があります。
3. 長時間労働のリスク
プロジェクトの納期前や障害対応時には、長時間労働が発生することがあります。ただし、近年は働き方改革により、労働環境は改善傾向にあります。
4. 顧客折衝のストレス
顧客の要望変更や、複数のステークホルダー間の調整など、技術以外の業務負担が大きいことがあります。コミュニケーション能力が求められる場面が多く、技術だけに集中したいエンジニアには向かない場合があります。
5. 特定技術への依存
メーカー系SIerでは、親会社の製品や特定のプラットフォームに依存することが多く、技術スキルの汎用性が限定される可能性があります。
SIerの年収事情
SIerの年収は、企業規模、事業タイプ、担当する工程によって大きく異なります。一般的なSIerの年収は400万円〜700万円程度ですが、大手企業や上流工程を担当する企業では、さらに高い水準となります。

大手SIerの年収例
具体的な大手SIerの平均年収は以下の通りです:
- 野村総合研究所(NRI): 約1,232万円
- 電通総研: 約1,128万円
- 日立製作所: 約935万円
- NTTデータ: 約905万円
- 富士通: 約865万円
- NEC: 約814万円
これらの企業は、安定した受注基盤と充実した社内制度を持ち、長期的なキャリア形成に適しています。
年収を上げるためのポイント
SIerで年収を上げるには、以下の戦略が有効です:
- 元請けSIerへの転職: 利益率の高い元請けポジションを確保することで、収入基盤を安定させる
- 上流工程へのシフト: 要件定義やコンサルティング業務を担当することで、単価を上げる
- プロジェクトマネジメントスキルの習得: PMやPMOとしての実績を積むことで、市場価値を高める
- 資格取得: プロジェクトマネージャー試験や高度情報処理技術者試験の取得
- 業界特化の専門性: 金融や医療など、特定業界のドメイン知識を深める
IT転職エージェントを活用することで、より高い年収のオファーを引き出すことも可能です。
SIerに向いている人・向いていない人
SIerでのキャリアが成功するかどうかは、個人の適性にも大きく依存します。
SIerに向いている人
- コミュニケーション能力が高い人: 顧客や社内の多様なステークホルダーと円滑に連携できる
- 論理的思考力がある人: 複雑な要件を整理し、体系的にシステム化できる
- 幅広い知識を身につけたい人: 多様な業界や技術に触れることを楽しめる
- チームワークを重視する人: 大規模プロジェクトでの協調作業を好む
- 安定志向の人: 長期的なキャリアを一つの企業で築きたい
SIerに向いていない人
- 最新技術を追求したい人: Webサービス企業やスタートアップの方が適している
- 自分のペースで働きたい人: フリーランスエンジニアの方が向いている可能性がある
- 調整業務を避けたい人: 純粋な技術職を希望するなら、Web系企業やプロダクト開発企業が適している
- スピード感を重視する人: 大規模システムは意思決定に時間がかかるため、スタートアップの方が合う
SIerへの転職を成功させるには
SIerへの転職を検討している方は、以下のポイントを押さえることで、成功確率を高められます。

1. 企業選びの基準を明確にする
売上高、年収、残業時間、口コミなど、複数の指標を総合的に評価しましょう。単に数字だけを見るのではなく、昇給スピード、評価制度、残業手当の有無など、実質的な年収を比較することが重要です。
2. 元請けSIerを狙う
前述の通り、下請け構造では利益率が低下します。元請けとして直接顧客と契約している企業を選ぶことで、より良い労働条件と高い給与を得られます。
3. 面接対策を徹底する
SIerの面接では、技術力だけでなく、コミュニケーション能力やプロジェクト管理能力も重視されます。IT転職の面接対策を参考に、事前準備を行いましょう。
4. 職務経歴書を戦略的に作成する
SIerでは、どのような規模のプロジェクトで、どの工程を担当したかが重視されます。履歴書・職務経歴書の書き方を参考に、実績を効果的にアピールしましょう。
5. 転職エージェントを活用する
SIer業界に精通したエージェントは、非公開求人の紹介や、企業ごとの選考対策を提供してくれます。複数のエージェントに登録し、幅広い選択肢を確保することが重要です。
SIerの将来性とキャリア展望
日本のシステムインテグレーション市場は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進により、今後も成長が見込まれています。政府が推進する「Society 5.0」構想により、企業はパイロットレベルの自動化から全面的なデジタル化へとシフトしており、大規模かつ複数年にわたる変革プログラムが生まれています。
今後のSIerに求められるスキル
- クラウド技術: AWS、Azure、GCPなどのクラウドプラットフォームの知識
- AI・機械学習: データ分析や予測モデルの構築スキル
- セキュリティ: サイバー攻撃対策とコンプライアンス対応
- アジャイル開発: 迅速な開発サイクルとフレキシブルな対応力
- ビジネス理解: 顧客の業務を深く理解し、価値を提案できる能力
これらのスキルを身につけることで、SIerでのキャリアは長期的に安定し、市場価値の高いプロフェッショナルとして活躍できます。
まとめ:SIerでのキャリアを考える
SIerは、日本のIT業界において重要な役割を担っており、75万人もの IT人材が所属する巨大な市場です。幅広い業界知識、大規模プロジェクトの経験、安定した雇用環境など、多くのメリットがあります。
一方で、多重請負構造や技術トレンドへの対応遅れなど、課題も存在します。特に、元請けと下請けでは労働条件や給与に大きな差があるため、企業選びは慎重に行う必要があります。
SIerへの転職を検討している方は、自分のキャリア目標と適性を見極め、企業の特性を十分に理解した上で、戦略的に転職活動を進めることが重要です。適切な準備と情報収集により、SIerでの充実したキャリアを築くことができるでしょう。



