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SES企業の仕組みとエンジニアの働き方

IT企業の種類と選び方【SIer・Web系・SES】
SES企業の仕組みとエンジニアの働き方

SES企業の仕組みとエンジニアの働き方

IT業界での転職を考える際、「SES企業」という言葉を耳にすることが多いでしょう。SES企業は日本のIT業界において重要な役割を果たしており、特に未経験者や若手エンジニアにとって、キャリアをスタートさせる有力な選択肢の一つとなっています。本記事では、SES企業の仕組みから実際の働き方、メリット・デメリットまで、IT転職を検討する方が知っておくべき情報を詳しく解説します。

SES企業とは?基本的な仕組みを理解する

SES(システムエンジニアリングサービス)とは、契約で定めた期間、クライアント企業に対してエンジニアの技術力や専門スキルを提供するサービスです。SES企業は、自社に所属するエンジニアをクライアント企業のプロジェクトに派遣し、システム開発の支援や保守業務を担います。

SES企業の最大の特徴は、準委任契約という契約形態にあります。これは、成果物の納品を目的とする請負契約とは異なり、一定期間の技術サービスの提供を約束する契約です。SESとは何か?基本を理解することは、IT業界で働く上で非常に重要です。

日本のIT業界では、現在約30万人の人材不足が発生しており、2030年までには40万~80万人の不足が予測されています。この深刻な人材不足を背景に、SES企業は柔軟な人材供給の仕組みとして、ますます重要な役割を担っています。

SES企業のビジネスモデルは、エンジニアの技術力とプロジェクト管理能力を組み合わせたものです。クライアント企業は必要な時に必要なスキルを持つエンジニアを確保でき、SES企業は継続的な案件受注により事業の安定性を確保します。エンジニア自身は、様々なプロジェクトに参加することで、多様な経験とスキルを獲得できるのです。

SES契約と派遣契約の違い

SES企業で働く上で理解しておくべき重要なポイントが、SES契約と派遣契約の違いです。この二つは似ているようで、法的には明確に異なる契約形態です。

ses company structure engineer work style image 1

最も重要な違いは指揮命令権の所在です。派遣契約との違いを理解することで、働き方の特性が見えてきます。派遣契約では、派遣先企業(クライアント)が労働者に対して直接指示を出す権限を持ちます。一方、SES契約では、指揮命令権は雇用元であるSES企業が保持します。

つまり、SESエンジニアはクライアント先で働いていても、業務上の指示は所属するSES企業から受けることになります。実際の現場では、クライアント企業のプロジェクトマネージャーと協力しながら業務を進めますが、法的な指揮命令系統は自社にあるのです。

もう一つの大きな違いは契約期間の制限です。派遣契約には労働者派遣法により、同一の組織単位での派遣期間は原則3年という制限があります。しかし、SES契約は準委任契約のため、この期間制限が適用されません。長期的なプロジェクトや継続的な技術サポートが必要な場合に、SES契約が選ばれる理由がここにあります。

項目

SES契約

派遣契約

契約形態

準委任契約(業務委託)

労働者派遣契約

指揮命令権

SES企業(雇用元)

クライアント企業(派遣先)

契約期間の制限

なし

原則3年まで

報酬の考え方

工数・期間ベース

時給・日給ベース

適用法律

民法、労働基準法

労働者派遣法

この違いを理解せずにSES企業に入社すると、現場での指示系統や契約条件について混乱する可能性があります。IT企業の種類を理解し、自分のキャリアプランに合った選択をすることが重要です。

SESエンジニアの実際の働き方

SESエンジニアの働き方は、一般的な社内SEやSIer企業のエンジニアとは大きく異なります。最も特徴的なのは、常駐型の勤務形態です。

SESエンジニアは、自社のオフィスではなく、クライアント企業のオフィスや開発現場に常駐して働きます。勤務地、勤務時間、服装、開発環境など、働く環境のほとんどがプロジェクトごとに変わるのが特徴です。SESエンジニアの業務内容は多岐にわたります。

プロジェクトの規模によって、配属されるチーム構成も変わります。大規模プロジェクトでは、同じSES企業から複数のエンジニアがチームとして派遣されることもあれば、小規模案件では一人で常駐することもあります。

コロナ禍以降、IT業界全体でリモートワークが急速に普及しました。現在、約50%のIT企業がリモートワークを導入しており、SES契約でもフルリモートや週1-2回の出社といった柔軟な働き方が増えています。ただし、セキュリティの観点から、金融系や官公庁系のプロジェクトでは、依然として完全常駐が求められるケースも多いです。

プロジェクトの期間は案件によって様々ですが、一般的には3ヶ月から1年程度が多く、長いものでは数年にわたる案件もあります。プロジェクトが終了すると、次の案件にアサインされるまでの間、自社での待機期間が発生する場合もあります。この待機期間の扱いは企業によって異なり、優良なSES企業では、待機期間中も給与が保証され、研修やスキルアップの機会が提供されます。

SEとしてのキャリアを考える際、この働き方の特性を理解しておくことが重要です。

SES企業で働くメリット

SES企業で働くことには、他の雇用形態にはない独自のメリットがあります。

ses company structure engineer work style image 2

多様なプロジェクト経験を積める

SESエンジニアの最大のメリットは、様々な業界や技術に触れられることです。自社開発企業や特定のクライアントのみを担当するSIer企業では、使用する技術スタックや業務領域が限定されがちです。しかし、SESエンジニアは、金融、医療、製造、Webサービスなど、多様な業界のプロジェクトに参加する機会があります。

様々な業界での経験を積むことで、特定の技術に偏らない幅広い知識と適応力を身につけることができます。

未経験者にも門戸が開かれている

SES企業は、未経験者を積極的に採用する傾向があります。IT業界全体の人材不足を背景に、研修制度を充実させ、未経験からエンジニアを育成するSES企業が増えています。

未経験からのIT転職を目指す方にとって、SES企業は実務経験を積むための貴重な機会となります。入社後の研修で基礎的なプログラミングスキルを学び、比較的難易度の低い案件からスタートして、徐々にステップアップしていくキャリアパスが一般的です。

安定した雇用と収入

SESエンジニアは、SES企業の正社員として雇用されるため、プロジェクトの有無にかかわらず、安定した給与が保証されます。フリーランスエンジニアのように、案件が途切れた際の収入不安はありません。

平均年収は370万円から780万円と幅がありますが、これは経験年数やスキルレベルによって大きく異なります。未経験や経験の浅いエンジニアは年収300万円台からスタートすることが多いですが、スキルアップによって着実に収入を増やせる可能性があります。IT業界の年収を理解し、適切なキャリアプランを立てることが重要です。

人間関係のリセット機会

プロジェクトが変わるたびに職場環境が変わるため、もし人間関係に問題があっても、次のプロジェクトでリセットできる点はメリットと言えます。自社開発企業では、同じメンバーと長期間働くため、一度人間関係が悪化すると解決が難しいケースもありますが、SES企業ではその心配が比較的少ないのです。

SES企業で働くデメリットと注意点

メリットがある一方で、SES企業で働くことにはいくつかのデメリットや注意すべき点もあります。

ses company structure engineer work style image 3

環境変化への対応が求められる

プロジェクトが変わるたびに、新しい環境に適応する必要があります。勤務地、開発環境、使用するツール、チームの文化など、すべてが変わります。また、人間関係も一から構築しなければなりません。この環境変化に柔軟に対応できる適応力が求められます。

環境の変化をストレスと感じる方や、一つのプロジェクトに腰を据えてじっくり取り組みたい方には、SES企業の働き方は向いていない可能性があります。

キャリアパスの不透明さ

SES企業では、どのようなプロジェクトにアサインされるかが、自分では選べないケースが多いです。希望する技術スタックや業務領域があっても、必ずしもその通りの案件に配属されるとは限りません。

また、プロジェクトの内容によっては、単純作業や保守業務が中心となり、スキルアップの機会が限られる場合もあります。エンジニアのキャリアパスを主体的に設計したい方は、案件選択の自由度や、社内でのキャリア相談体制を事前に確認することが重要です。

収入の上限と昇給の仕組み

SESエンジニアの給与は、クライアントがSES企業に支払う単価から、SES企業のマージンを差し引いた金額になります。このマージン率は企業によって大きく異なり、20%程度の優良企業もあれば、50%以上を抜く企業もあります。

つまり、自分のスキルが向上してクライアント単価が上がっても、会社のマージン率が高ければ、手元に入る給与の増加は限定的です。特に、スキルレベルが高いエンジニアほど、この構造に不満を感じやすくなります。フリーランスへの転身を視野に入れる方も多いでしょう。

偽装請負のリスク

SES契約では、指揮命令権はSES企業にありますが、実際の現場では、クライアント企業の社員から直接指示を受けることが常態化しているケースがあります。これは偽装請負と呼ばれる違法行為です。

偽装請負の現場では、労働環境や労働時間の管理が曖昧になりやすく、エンジニアの権利が守られない可能性があります。優良なSES企業は、コンプライアンスを徹底し、定期的な面談やヒアリングを通じて、適切な就業環境を維持していますが、すべての企業がそうとは限りません。

デメリット

影響度

対策

環境変化への適応

柔軟性とコミュニケーション力を磨く

キャリアパスの不透明さ

案件選択の自由度を事前確認

収入の上限

マージン率の低い企業を選ぶ

偽装請負リスク

コンプライアンス体制を確認

スキルアップ機会の偏り

自己学習と資格取得で補完

優良SES企業の見分け方

SES企業の中には、エンジニアのキャリアを真剣に考え、適切な労働環境を提供する優良企業もあれば、残念ながら、エンジニアを「商品」としてしか見ていない企業も存在します。優良なSES企業を見分けるポイントを押さえておきましょう。

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マージン率の透明性

優良なSES企業は、マージン率を明示しています。一般的に、20~30%程度が適正な範囲とされています。50%を超えるような高いマージン率の企業は避けるべきでしょう。面接時に「クライアント単価と自分の給与の関係」について質問し、明確な回答が得られるかを確認しましょう。

案件選択の自由度

エンジニアの希望を聞き、スキルやキャリアプランに合った案件を提案してくれる企業は信頼できます。「とにかくどこかに派遣する」という姿勢の企業ではなく、定期的なキャリア面談を実施し、エンジニアの成長を支援する体制がある企業を選びましょう。

研修・教育制度の充実

入社時の研修だけでなく、継続的なスキルアップ支援がある企業は優良です。資格取得支援、社内勉強会、外部セミナーへの参加補助など、具体的な制度があるかを確認しましょう。IT資格の活用はキャリアアップに有効です。

待機期間の扱い

プロジェクト間の待機期間が発生した場合の扱いは、企業の姿勢を示す重要なポイントです。待機期間中も給与が全額支払われ、研修やスキルアップの機会が提供される企業は信頼できます。

労務管理の適切性

残業時間の管理、有給休暇の取得率、健康診断の実施など、労務管理が適切に行われているかも重要です。働き方の質は、長期的なキャリアに大きく影響します。

IT転職エージェントを活用すると、企業の評判や実態について、より詳しい情報を得られる場合があります。

IT業界におけるSES企業の位置づけ

日本のIT業界は、独特の多重下請け構造で知られています。元請け(プライムベンダー)から二次請け、三次請けと階層が下がるにつれて、マージンが抜かれ、末端のエンジニアの取り分が減少します。SES企業の多くは、この構造の中で二次請け以下の位置にいることが多いのが現状です。

しかし、すべてのSES企業がこの構造の底辺にいるわけではありません。直請け案件を多く持つSES企業や、特定の技術領域に強みを持ち、高単価で契約できる企業も存在します。また、近年では、従来の多重下請け構造から脱却し、クライアントと直接契約するモダンSES企業も登場しています。

IT業界全体としては、クラウド技術やAI・機械学習など、新しい技術領域の需要が急速に拡大しています。DX・AI時代のIT戦略において、これらの技術を持つエンジニアは、SES企業においても高く評価され、より良い条件で働ける可能性があります。

SES企業からのキャリアアップ戦略

SES企業で働くことを、キャリアの最終目的地ではなく、キャリアの通過点と捉えることが重要です。

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SES企業での経験を最大化する

SES企業にいる間に、できるだけ多様な経験を積み、幅広いスキルを身につけることが重要です。異なる業界、異なる技術スタック、異なる開発手法(ウォーターフォール、アジャイルなど)を経験することで、市場価値の高いエンジニアになれます。

また、技術スキルだけでなく、コミュニケーション能力やプロジェクト管理能力も磨きましょう。クライアント企業の社員と協力してプロジェクトを進める経験は、将来どの企業でも活かせる貴重な資産です。

次のステップを計画する

SES企業で2~3年の実務経験を積んだら、次のキャリアステップを考えましょう。選択肢としては以下のようなものがあります。

  1. 自社開発企業への転職: 特定のプロダクトに深く関わり、企画から運用まで一貫して携わる経験を積む
  2. 上流工程に強いSIer企業への転職: 要件定義やシステム設計など、より上流の工程を担当する
  3. フリーランスエンジニアとして独立: フリーランス転身により、収入の大幅アップを目指す
  4. 専門性を深める: 特定の技術領域(AIエンジニア、セキュリティエンジニアなど)のスペシャリストになる

スキルアップ戦略を立て、計画的にキャリアを構築しましょう。

転職活動の準備

SES企業での経験を、効果的に職務経歴書にまとめることが重要です。単に「○○システムの開発に参加」ではなく、「どのような役割を担い、どのような成果を出したか」を具体的に記述しましょう。履歴書・職務経歴書の書き方を理解し、自分の経験を適切にアピールすることが転職成功の鍵です。

まとめ:SES企業は自分に合っているか

SES企業は、日本のIT業界において重要な役割を果たしており、特に未経験からエンジニアキャリアをスタートする方や、多様な経験を積みたい方にとって、有力な選択肢の一つです。

しかし、すべての人にSES企業が適しているわけではありません。環境変化への適応力、主体的なキャリア構築の意識、継続的な学習意欲が求められます。また、企業選びを慎重に行い、優良なSES企業を見極めることが、成功の鍵となります。

SES企業での経験を、将来のキャリアにどう活かすか、明確なビジョンを持つことが重要です。IT転職の完全ガイドを参考に、自分に合ったキャリアパスを見つけてください。

IT業界は今後も成長が続き、エンジニアの需要は高まり続けるでしょう。SES企業での経験を活かし、市場価値の高いエンジニアとして成長していくことで、より良いキャリアを築くことができます。自分の目標と現状を見つめ直し、最適な選択をしてください。

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