官公庁・公共セクターのIT転職とデジタル庁
IT業界の業種別転職ガイド【金融・医療・製造等】
官公庁・公共セクターのIT転職とデジタル庁
デジタル化が急速に進む現在、官公庁や公共セクターでもIT人材の需要が急増しています。特に2021年に設立されたデジタル庁は、国民向けのデジタルサービス提供とDX推進の最前線として、多くのIT専門家を求めています。
本記事では、官公庁・公共セクターへのIT転職の特徴、メリット・デメリット、そしてデジタル庁の採用戦略について詳しく解説します。民間企業とは異なる公共セクターのIT転職を検討している方必見です。
官公庁・公共セクターIT転職の基本理解
デジタル庁とは何か
デジタル庁は、2021年9月1日に設立された日本の行政機関で、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」をミッションとしています。内閣の直属組織として、国全体のデジタル化を推進する役割を担っています。

デジタル庁の主要な役割は以下の通りです:
- 国民向けサービス:マイナポータルなどの個人向けデジタルサービスの開発・運用
- 事業者向けサービス:企業が利用する行政手続きのデジタル化
- 省庁・自治体向けサービス:中央省庁や地方自治体のシステム導入支援
官公庁IT転職の全体像
官公庁へのIT転職は、デジタル庁に限りません。以下のような機関でもIT人材が活躍しています:
- 中央省庁(経済産業省、厚生労働省など)
- 地方自治体(都道府県庁、市区町村)
- 警察、防衛省などの特殊機関
- 独立行政法人
各機関でDX推進が進むにつれて、システムエンジニア、プログラマー、ネットワークエンジニア、PMなど、多様なIT職種の需要が増加しています。
デジタル庁での仕事内容と特徴
関わることができるプロジェクト
デジタル庁は、発足からまだ数年という新しい組織であり、多くの大規模プロジェクトが並行して進行しています。以下のような案件に携わる可能性があります:

プロジェクト | 説明 | スキル要件 |
|---|---|---|
マイナポータル | 国民が自らの情報にアクセスできるポータルサイト | Web開発、クラウド基盤 |
デジタル手続き | 行政手続きのオンライン化 | システム設計、統合 |
クラウド化推進 | 省庁システムのクラウド移行 | インフラ、セキュリティ |
データ連携 | 省庁間の情報連携基盤 | API設計、データベース |
採用される職種と役割
デジタル庁では、以下のような職種のIT人材が採用されています:
- システムエンジニア(SE):要件定義から設計、テストまでの全体統括
- プログラマー:コード実装とユニットテスト
- インフラエンジニア:クラウド基盤の構築・運用
- プロジェクトマネージャー(PM):大規模プロジェクトの管理
- セキュリティエンジニア:行政情報のセキュリティ対策
特に注目すべき点は、デジタル庁は「ずば抜けた技術力」よりも、「自分なりのスキルで貢献する意欲」を重視しているということです。つまり、経歴書上の華々しい経歴がなくても、チームに貢献する姿勢がある人材が評価されます。
デジタル庁への転職のメリット
社会への大きな貢献を実感できる
官公庁・公共セクターのIT転職における最大のメリットは、社会貢献の実感です。

マイナポータルは数百万人の国民が利用するサービスであり、自分たちの開発したシステムが国民生活を直接改善する経験は、民間企業では得難いものです。国のデジタル化という大義のもとで働くことで、高い倫理観とモチベーションを維持できます。
安定した雇用と待遇
公務員や公務員に準ずる雇用形態での就職となるため、以下のような安定性が得られます:
- 雇用の安定性:リストラの心配がほぼない
- 給与・昇進の予測可能性:年功序列による給与表が公開されている
- 福利厚生:退職金、年金、各種休暇が充実
ただし、民間企業と比べると給与水準は低い傾向にあります。
ワークライフバランスの充実
デジタル庁では以下のような働き方が実現しています:
- テレワークの実施:基本的にリモートワークが可能
- 定時勤務:基本的に定時での退勤が推奨されている
- 有給休暇の取得奨励:年間休暇日数が比較的多い
民間のIT企業で長時間労働を強いられていた人にとっては、この点は大きなメリットとなり得ます。
スケールの大きいプロジェクト経験
デジタル庁のプロジェクトは、多くの国民や省庁に影響を与える規模のものばかりです。このような大規模プロジェクトでの経験は、キャリア形成において貴重な資産となります。
デジタル庁への転職のデメリットと課題
給与が民間より低い傾向
公務員制度に基づく給与体系のため、民間のIT企業と比べると年収が低い傾向があります。特に、スタートアップやメガテック企業で高い給与を得ていた人にとっては、大幅な減収となる可能性があります。

意思決定プロセスの遅さ
行政機関では、セキュリティやコンプライアンスの観点から、かなり厳格な意思決定プロセスを経る必要があります。民間企業のスピード感に慣れた人にとっては、プロジェクトの進行の遅さにストレスを感じることがあります。
技術スタックの制限
セキュリティ要件から、導入できる技術やツールが制限される傾向があります。最新の技術を常に使用できるわけではなく、実績のある技術を中心に採用される傾向があります。
人事異動と転職の難しさ
公務員制度では定期的な人事異動が行われます。また、公務員としてのキャリアは民間企業での評価に必ずしもプラスにならないため、将来的に民間への転職を考える場合は注意が必要です。
官公庁IT転職の適性と向いている人
こんな人に向いている
- 社会貢献を最優先にしたい:給与よりも社会への貢献を重視する
- 安定性を重視する:長期的なキャリア形成を考えている
- 働き方を改善したい:ワークライフバランスの改善が急務
- 大規模プロジェクトに興味がある:数百万人規模の利用者を想定した設計に興味がある
- 行政のデジタル化に関心がある:国のDX推進に直接関わりたい
向いていない人
- 最新技術を常に使いたい:最先端のテック企業で働きたい
- 年収を最大化したい:給与重視で就職先を選ぶ
- スピード重視:素早い意思決定と実装を求める
- 起業志向:スタートアップで経験を積みたい
デジタル庁採用試験の特徴と対策
応募条件と選考プロセス
デジタル庁の採用は、一般的な公務員試験とは異なり、より民間企業に近い採用プロセスを取っています:
- エントリー:履歴書と職務経歴書による書類審査
- 一次面接:経歴や志動機に関する確認
- 二次面接:技術的な適性と、デジタル庁での働き方に関する理解度の確認
- 最終面接:経営陣との面談
面接で聞かれる内容
- デジタル庁のミッションについての理解度
- 官公庁での仕事に対する現実的な期待
- セキュリティやコンプライアンスに対する理解
- 過去のプロジェクト経験と成果
- チームワークと協調性
採用で重視される点
先述の通り、デジタル庁は以下を重視しています:
- 基礎的な技術力:セキュアなコーディング、基本的な設計能力
- 貢献意欲:組織のミッション達成に向けた積極的な態度
- コミュニケーション能力:多くの関係者との調整能力
- 学習姿勢:新しい技術やドメイン知識を習得する意思
官公庁IT転職の年収と待遇
年収水準
デジタル庁の年収は、採用時の職位や経歴年数によって異なりますが、目安は以下の通りです:
- 初任給(新卒):約320万円~350万円
- 経験者採用:経験年数に応じて400万円~700万円程度
- 管理職:700万円~1000万円程度
これは民間IT企業と比べると、同レベルの職位でも20~30%程度低い傾向があります。
福利厚生
- 健康保険:公務員健康保険(手厚い内容)
- 年金:共済年金(厚い給付)
- 退職金:勤続20年で約800万円~1000万円
- 休暇:年間120日程度の休暇日数
転職準備と応募のポイント
応募前の準備
- デジタル庁のミッション確認:公式サイトで採用ページを確認
- 必要な技術の確認:募集職種に応じた技術スタックの学習
- 職務経歴書の準備:過去のプロジェクト経験を具体的に整理
参考:デジタル庁採用情報
応募時のポイント
- デジタル庁のミッションへの共感を明確に述べる
- 過去の公共セクター経験がある場合は強調する
- セキュリティやコンプライアンスへの理解を示す
- 給与より社会貢献を重視する姿勢を表す
他の官公庁への転職との違い
デジタル庁は他の官公庁よりも、以下の点で異なります:
- 採用がより流動的:年間通じて採用活動を実施
- 民間企業の経験者を積極採用:キャリア組を重視しない
- テレワークが当たり前:政府機関の中では最も働き方が柔軟
- プロジェクト単位での異動:人事異動の理由が明確
官公庁IT転職後のキャリアパス
デジタル庁での成長機会
デジタル庁では以下のようなキャリア形成が可能です:
- 個別プロジェクトの深掘り:1つのプロジェクトで専門性を深める
- 複数プロジェクトの経験:異なる省庁システムの経験で広い視野を養う
- マネジメント職への昇進:PM、PdMなどのマネジメント職へのステップアップ
- 他省庁への転籍:経験を活かして他の行政機関へ異動
民間企業への転職可能性
デジタル庁でのキャリアは、その後の民間企業への転職において、以下のような評価が得られる可能性があります:
- プロジェクト管理経験:大規模プロジェクトの経験
- セキュリティ・コンプライアンス知識:規制が厳しい環境での実装経験
- 政府機関への理解:公的セクターとのビジネス経験
ただし、民間企業によっては、公務員組織での経験が必ずしもプラスに評価されない場合もあります。
転職を成功させるための戦略
転職エージェントの活用
官公庁への転職に特化したIT転職エージェントを利用することで、以下のメリットが得られます:
- デジタル庁の最新採用情報へのアクセス
- 面接対策と業界知識の提供
- 他の官公庁求人の紹介
スキルの棚卸しと準備
転職前に、以下のスキルを整理しておきましょう:
- 技術スキル:プログラミング言語、フレームワーク、インフラ知識
- プロジェクト管理:過去のプロジェクト規模と成果
- ドメイン知識:金融、医療など業界経験があれば有利
関連資格の取得
以下の資格は、官公庁IT転職で有利に働く可能性があります:
- 情報処理試験(応用情報技術者、データベーススペシャリスト)
- セキュリティ関連資格(情報セキュリティマネジメント試験、CISSP)
- クラウド関連資格(AWS、Azure認定資格)
IT資格での転職有利化ガイドも参考になります。
よくある質問とFAQ
Q: 公務員経験がなくても採用されますか?
A: はい、デジタル庁は民間企業出身者を積極採用しています。むしろ、民間での実務経験が重視される傾向があります。
Q: 給与交渉はできますか?
A: 公務員制度に基づく給与表があるため、交渉の余地はほとんどありません。ただし、経験年数などの評価条件について交渉できる場合があります。
Q: 家族帯同での配置転換はありますか?
A: デジタル庁は東京に本部があり、テレワークが実施されているため、人事異動による引越しは比較的少ないと言われています。
Q: 民間への転職は難しくなりますか?
A: 公務員としてのキャリアは、民間企業での市場価値が必ずしも高くない傾向があります。将来の民間転職を視野に入れている場合は、その点を踏まえてキャリアを形成することが重要です。
まとめ
官公庁・公共セクターのIT転職、特にデジタル庁への転職は、以下の特徴を持つ選択肢です:
メリット:
- 社会への大きな貢献を実感できる
- ワークライフバランスが充実している
- 雇用が安定している
- 大規模プロジェクトの経験が得られる
デメリット:
- 給与が民間企業より低い
- 意思決定プロセスが遅い
- 技術スタックが限定される
- 公務員キャリアは民間で評価されにくい
デジタル庁への転職が自分のキャリアにとって最適な選択かどうかは、給与、働き方、社会貢献のバランスについて、個人の価値観に基づいて判断することが重要です。
安定と社会貢献を優先し、ワークライフバランスを大切にする人にとっては、公共セクターのIT転職は非常に魅力的な選択肢となるでしょう。



