エンジニアリングマネージャーへのキャリアパス
ITエンジニアのキャリアパス設計ガイド
エンジニアリングマネージャーへのキャリアパス:段階的なステップアップガイド
エンジニアリングマネージャー(EM)は、今最も需要の高い職種の一つです。しかし、単なる昇進ではなく、キャリアの大きな転換点となります。本記事では、エンジニアからEMへの段階的なキャリアパスと、成功するための要素を詳しく解説します。
エンジニアリングマネージャーとは何か
エンジニアリングマネージャー(EM)は、技術チームのリーダーシップと人材管理を担当する職種です。単なる管理職ではなく、技術的な専門知識とマネジメント能力の両方が求められます。
EMの3つの主要責任
- ピープルマネジメント:メンバーの採用、評価、育成、キャリア開発
- テクノロジーマネジメント:技術的負債の解消、技術選定、アーキテクチャレビュー
- プロダクト/プロジェクトマネジメント:技術的観点での開発推進、マイルストーン管理
これらの責任のバランスは企業によって異なります。スタートアップでは技術的な判断がより重要であり、大企業ではピープルマネジメントのウェイトが大きくなる傾向があります。
標準的なキャリアステップ:5〜8年の道のり
エンジニアからEMへのキャリアパスは、通常5〜8年の期間を要します。以下が一般的なステップです。

ステップ1:エンジニア(1〜2年目)
個人としての技術スキルを確立する段階です。コーディング能力、問題解決能力、システム設計の基礎を学びます。
ステップ2:シニアエンジニア(3〜5年目)
技術的な深い知見を獲得し、専門分野での権威性を確立します。複数の大規模プロジェクトでの経験が必要です。
ステップ3:テックリード(4〜6年目)
チームの技術的方向性を決定し、他のエンジニアへのガイダンスを開始します。この段階は、マネジメント適性を試す重要な段階です。テックリードの経験が不足していると、EM候補者として採用されにくくなります。
ステップ4:エンジニアリングマネージャー(6〜8年目以上)
正式にチームの管理職となります。IT転職の完全ガイド【未経験からエンジニアへ】で詳しく説明していますが、このキャリアの転換点では、技術面とマネジメント面の両方に注力する必要があります。
キャリアステップ | 必要年数 | 主要なスキル | 責任範囲 |
|---|---|---|---|
エンジニア | 1-2年 | コーディング、問題解決 | 個人の成果 |
シニアエンジニア | 3-5年 | 設計、アーキテクチャ | プロジェクト推進 |
テックリード | 4-6年 | リーダーシップ、指導 | チーム技術方針 |
EM | 6-8年+ | マネジメント、戦略 | チーム全体成果 |
成功の鍵となる3つの要素
1. 十分な技術経験
EMになる前に、少なくとも6〜7年の実務的なエンジニア経験が必要です。これは単なる年数ではなく、複数の技術スタック、大規模なシステム設計、複雑な問題解決の経験を意味します。
重要な警告:7年未満のエンジニア経験でEMに転身すると、技術的な流行や発展についていくのが難しくなり、エンジニアとしての復帰が困難になるリスクがあります。
2. 強力なコミュニケーション能力
EMは日々、以下のコミュニケーションに従事します:
- エンジニアとの1on1ミーティング
- 経営層への説明責任
- クロスファンクショナルな協力
- 困難なフィードバック
優れたコミュニケーション能力がないと、ピープルマネジメントで失敗します。
3. 人を育てることへのパッション
EMは、自分のコードではなく、人の成長によって成果が測定されます。個人の技術的達成よりも、チームメンバーのキャリア発展に喜びを感じられることが必須です。
日本でのEM市場とキャリアチャンス
日本でのエンジニアリングマネージャーの需要は、急速に増加しています。DX推進とデジタル化の波により、大手IT企業だけでなく、非IT企業でもEM職の新設が相次いでいます。
年収のリアル
日本でのEMの平均年収は10〜20百万円です。一般的なシニアエンジニアと比較して30〜50%高いことが多く、年1,000万円を超えるポジションも珍しくありません。
ただし、年収だけを目指してEMに転身することは危険です。IT業界の年収ガイド【職種別・企業別・年齢別】で詳しく説明していますが、給与と職務内容のミスマッチが多くの早期離職を生み出しています。
採用企業が見ている評価基準
EMを採用する企業は、候補者に以下の要素を厳しく評価します:
実績ベースの評価
- 複数プロジェクトでのリーダーシップ経験
- 部分的なマネジメント責任の実績
- チーム成果への貢献度の実績
スキルセット
- 複数の技術スタックの経験
- システム設計能力
- アーキテクチャレベルでの思考
- IT資格で転職を有利にする完全ガイドで述べられているような認定資格
ソフトスキル
- チーム内での信頼度
- 他職種との協働経験
- 多様性への理解と包容力
採用担当者は、テックリード経験が不足している候補者を慎重に評価します。これは、マネジメント適性を判断する最良の試金石だからです。
EM就職後のキャリア展開
EMのポジションに就いた後も、キャリアの選択肢は複数存在します。

マネージングマネージャーへの昇進
2〜5年のEM経験と、証明可能な成果(プロダクト出荷実績、人材育成実績)があれば、マネージングマネージャー(複数のEMを管理する職)に昇進できます。
ただし、マネージングマネージャーの職は、全体の70%以上が内部昇進で埋められます。外からの中途採用はきわめて限定的です。
VPoE(Vice President of Engineering)
エンジニアリング組織全体の責任者として機能する役職です。EMの経験を活かし、組織戦略レベルでの判断が求められます。
CTO(Chief Technology Officer)
最高技術責任者として、企業全体の技術戦略を統括します。EMからCTOへの道は、IT転職の完全ガイド【未経験からエンジニアへ】で触れられている経営層への移行の一種です。
個人貢献者への復帰
EM経験を活かしながら、再びシニアエンジニアやアーキテクトとしてのキャリアに戻ることも可能です。「エンジニアに戻りたい」という選択は決して後退ではなく、キャリアの多様化として見なされるべきです。
EM転職時に注意すべきポイント
企業ごとに役割が異なる
「エンジニアリングマネージャー」というタイトルでも、企業によって責任範囲は大きく異なります。

- スタートアップ:技術判断の比重が高い(60-70%)、プレイングマネージャーが多い
- 成長期ベンチャー:人材育成と技術的リーダーシップが均等
- 大企業:ピープルマネジメントと組織運営が中心
求人票だけでは判断できないため、実際の職務内容を面接で詳しく聞く必要があります。
プレイングマネージャーの罠
「プレイングマネージャー」として自分でもコードを書きながらチームを管理する形式は、初期段階では多いです。しかし、これが習慣化すると、マネジメントに必要な時間が確保できなくなり、チーム全体のパフォーマンスが低下します。
内部昇進 vs 外部からの転職
内部昇進でEMになった場合、既存の人間関係や企業文化への理解があり、適応が容易です。一方、外部からの中途採用として参画する場合は、企業文化の理解に時間がかかる可能性があります。
業界統計と市場トレンド
市場需要
- 米国では年間13,000件以上のEM職が新設されている
- 日本でも、大手企業のDX推進に伴い、EM職の新設が加速
- 特にスタートアップと成長期ベンチャーでの需要が急増
給与トレンド
- 米国:$110,000〜$182,557(平均$128,825)
- 日本:10百万〜20百万円
- 今後2年で、EM職の給与相場が10〜15%上昇する見込み
人材不足
エンジニアリングマネージャーの慢性的な不足が報告されており、特に「実務経験が豊かで、かつ人を育てることに真摯に向き合える人材」の不足が顕著です。
転職活動でのアピール方法
実績ベースのポートフォリオ
- 過去のプロジェクトでの技術的貢献
- リーダーシップの実例(テックリード、プロジェクトリード)
- チームメンバーの成長実績
将来ビジョンの明確化
「管理職としてキャリアを進めたい」という漠然とした動機では不十分です。5年後、10年後にどのような技術組織を作りたいのか、その中で自分がどのような役割を果たしたいのかを明確にする必要があります。
IT転職エージェント徹底比較【おすすめランキング】で述べられているように、EM職への転職は専門的なサポートが有効です。EM職に特化した転職エージェントの利用をお勧めします。
よくある後悔と対策
「思ったより技術から離れた」
解決策:EM就職前に、実際のマネジメント業務を体験できるプログラム(メンターシップ、プロジェクトリード)に参加することです。
「人間関係が複雑で疲弊した」
解決策:チームの文化や人間関係を十分にリサーチした上で転職先を選ぶことが重要です。
「給与の割に責任が重い」
解決策:給与だけでなく、職務内容、チーム規模、期待される成果を明確に理解してから転職することです。
まとめ
エンジニアリングマネージャーへのキャリアパスは、単なる昇進ではなく、キャリアの大きな転換点です。
成功の鍵:
- 最低6〜7年の実務的なエンジニア経験を積む
- テックリード経験でマネジメント適性を試す
- コミュニケーション能力と人材育成への情熱を磨く
- 企業の役割定義を正確に理解してから転職する
日本でもEM職の需要は急速に増加しており、今はキャリアの転換のチャンスです。ただし、技術への情熱と人を育てることへのパッションが両立できる人にとって最適な選択肢です。
あなたのキャリアを次のステップに進めるために、IT転職の完全ガイド【未経験からエンジニアへ】やIT転職エージェント徹底比較【おすすめランキング】も参考にしてください。



